爪の付け根や、爪の横の部分が赤く腫れて、ズキズキと痛む。このような症状は、「爪囲炎(そういえん)」または、さらに炎症が進行して膿がたまった状態を「瘭疽(ひょうそ)」と呼びます。指先の小さな傷や、ささむくれ、深爪、あるいはマニキュアなどの処理が原因で、皮膚のバリア機能が壊れた部分から細菌(主に黄色ブドウ球菌やレンサ球菌など)が侵入し、感染を起こすことで発症します。この爪囲炎やひょう疽の治療においては、「皮膚科」と「整形外科」のどちらも対応が可能です。初期の、赤みや腫れ、痛みが比較的軽い段階であれば、まずは皮膚科を受診するのが一般的です。皮膚科では、感染を抑えるための抗生物質の内服薬や、患部に塗る抗生物質入りの軟膏が処方されます。患部を清潔に保つことが重要で、入浴も可能ですが、過度に温めすぎると痛みが強くなることがあるため注意が必要です。しかし、症状が進行し、膿が明らかに溜まって、指先がパンパンに腫れあがり、拍動するような強い痛み(拍動痛)がある場合には、外科的な処置が必要となることがあります。その処置とは、溜まった膿を外に出すための「切開排膿」です。局所麻酔をした上で、メスで皮膚を小さく切開し、膿を押し出します。この切開排膿は、皮膚科でも行いますが、より外科的な処置に慣れている「整形外科」で行われることも多いです。特に、炎症が指の骨(末節骨)にまで及ぶ「骨髄炎」や、指を曲げる腱の通り道にまで感染が広がる「化膿性腱鞘炎」といった重篤な状態が疑われる場合には、整形外科での専門的な治療が不可欠となります。これらの状態を放置すると、指の機能に重大な後遺症を残す可能性もあるため、早期の対応が求められます。爪の周りの痛みが数日経っても改善しない、あるいは痛みがどんどん強くなり、膿で白っぽく見える部分が出てきたら、我慢せずに医療機関を受診するようにしましょう。