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2025年8月
  • 「不機嫌病」の正体、なぜ発疹と同時に機嫌が悪くなるのか

    医療

    突発性発疹の経過の中で、多くの保護者を最も悩ませ、疲れさせてしまうのが、熱が下がって発疹が出る頃に始まる、赤ちゃんの激しい「不機嫌」です。高熱の間は意外とケロッとしていたのに、解熱後に人が変わったようにぐずり続けるため、突発性発疹は別名「不機嫌病」とも呼ばれています。この現象は、医学的に明確な原因が解明されているわけではありませんが、いくつかの理由が複合的に関わっていると考えられています。まず、最も有力な理由として、高熱による「体力の消耗と倦怠感」が挙げられます。赤ちゃんにとっては、3〜4日間も続く高熱は、まさにフルマラソンを走りきったようなものです。大人がインフルエンザにかかった後、熱が下がっても、しばらく体がだるく、気分がすぐれないのと同じように、赤ちゃんも体力を使い果たし、全身にだるさや不快感を抱えています。しかし、赤ちゃんはその不快感を言葉で表現することができないため、「泣く」「ぐずる」という形でしかSOSを発信できないのです。また、ウイルスが脳に何らかの軽微な影響を与えている可能性も指摘されています。突発性発疹の原因であるヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)は、神経に親和性のあるウイルスで、稀に熱性けいれんや脳炎といった合併症を引き起こすことがあります。重篤な合併症に至らなくても、ウイルスの影響で脳が過敏な状態になり、それが不機嫌さとして現れているのではないか、という説です。さらに、心理的な要因も考えられます。生まれて初めて経験する高熱や、体中に広がる発疹という、これまで感じたことのない体の変化に対して、赤ちゃん自身が戸惑い、不安を感じているのかもしれません。この「不機嫌病」の時期の親の対応は、非常に重要です。なぜ泣いているのか分からず、保護者の方もイライラしてしまうかもしれませんが、これは赤ちゃんのわがままではなく、病気によるつらい症状なのだと理解してあげることが大切です。「つらいね」「大丈夫だよ」と声をかけ、たくさん抱っこしたり、寄り添ったりして、赤ちゃんに安心感を与えてあげてください。この激しい不機嫌も、通常は発疹が消えるのと前後して、数日から1週間程度で自然に落ち着いていきます。今が一番つらい時期なのだと捉え、ゆったりとした気持ちで乗り越えましょう。