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医療現場から見た肋間神経痛の診断プロセスと診療科連携
病院を訪れる患者さんの中で、胸の痛みを訴える方の多くが肋間神経痛を疑って来院されますが、私たち医師が最初に行うのは、実は「肋間神経痛ではない他の病気」を見落とさないための除外診断です。医療の現場において、肋間神経痛は何科という議論は、診療科同士の緊密な連携を前提としています。例えば、ある患者さんが「背中から胸にかけて電気が走るように痛む」と言って内科を訪れた場合、私たちはまず心電図や血液検査を行い、心臓や膵臓、胆嚢といった臓器に炎症や異常がないかを確認します。もしここで何らかの数値異常が見つかれば、そのまま内科的治療が始まりますが、内臓に全く異常がないことが証明されて初めて、私たちは整形外科的疾患や神経の問題を検討します。整形外科にバトンタッチされた後、レントゲンやCT、MRIなどの画像診断が行われ、脊髄や神経根の圧迫状態が精査されます。ここで興味深いのは、骨には異常がないのに痛みが出る、いわゆる機能性の肋間神経痛も少なくないという点です。これは現代人に多い長時間のスマートフォン操作や、無理な姿勢でのデスクワークが、肋間筋を硬直させ、神経を締め付けていることが原因です。この場合、治療は投薬だけでなく、理学療法や生活指導が中心となります。一方で、画像診断でも物理的な原因が特定できず、なおかつ日常生活に支障をきたすほどの激痛が続く場合、私たちはペインクリニックへの受診を提案することがあります。ペインクリニックはまさに「痛みの専門科」であり、麻酔科医としての高度な技術を駆使して、痛みそのものを治療対象とします。超音波ガイド下で行われる神経ブロック注射などは、即効性が高く、長年苦しんできた患者さんのQOLを劇的に向上させることがあります。また、最近では帯状疱疹ワクチンの普及により、皮膚科と連携して予防的なアプローチを取ることも増えています。このように、肋間神経痛の診断と治療は、内科、整形外科、皮膚科、ペインクリニックといった各分野のスペシャリストが、それぞれの役割を果たしながら1人の患者さんを支える構造になっています。患者さんが最初に行く科がどこであっても、正確な問診と適切な検査が行われれば、自ずと最適な治療を受けられる診療科へと導かれる仕組みが整っているのです。