ある日、鏡でのどを覗いてみると、のどの中央にぶら下がっている「のどちんこ」に、まるで口内炎のような白いできものができていたり、赤く腫れていたりして、痛みや違和感を覚えることがあります。この「のどちんこ」の正式名称は「口蓋垂(こうがいすい)」といい、ここに炎症が起きた状態を「口蓋垂炎(こうがいすいえん)」と呼びます。私たちが口内炎と認識する症状の多くは、この口蓋垂炎である可能性が高いのです。口蓋垂は、食べ物や飲み物が鼻の奥へ逆流するのを防いだり、発音を助けたりする重要な役割を担っています。このデリケートな部分に炎症が起こる原因は多岐にわたります。最も多いのは、風邪のウイルスや細菌による感染です。喉全体の炎症(咽頭炎)の一部として、口蓋垂にも炎症が及ぶのです。また、アレルギー反応や、大きないびきによる物理的な刺激、アルコールの多飲、喫煙なども、口蓋垂炎の引き金となります。主な症状は、喉の痛み、食べ物や唾を飲み込む時の痛み(嚥下痛)、喉の異物感やイガイガ感、声がこもる感じなどです。炎症が強いと、口蓋垂が長く伸びて舌の奥に触れるため、常に吐き気をもよおすこともあります。では、このような症状に気づいた時、何科を受診すればよいのでしょうか。最も専門的に診察・治療ができるのは「耳鼻咽喉科」です。耳鼻咽喉科医は、喉の構造と病気に精通しており、専用の器具(ペンライトやファイバースコープなど)を使って、口蓋垂の状態だけでなく、その奥にある咽頭や喉頭まで詳しく観察することができます。これにより、単なる口蓋垂炎なのか、あるいは扁桃炎や、稀ですがより重篤な病気(急性喉頭蓋炎など)が隠れていないかを正確に診断することが可能です。もちろん、かかりつけの「内科」でも初期対応は可能ですが、症状が強い場合や、数日経っても改善しない場合は、耳鼻咽喉科への受診を強くお勧めします。のどちんこの異常は、体からの重要なサインです。自己判断で放置せず、専門医の診察を受けることが、早期回復への一番の近道となります。