病院と市販薬のどっちが安いかを議論する際、レシートに記載された金額だけを比較するのは不十分です。現代社会において最も貴重な資産の1つである「時間」という観点から、それぞれのコストを再定義する必要があります。病院を受診する場合、まず診療時間内に病院へ移動し、受付をしてから診察を待つ時間が発生します。混雑している時期であれば、待ち時間だけで1時間や2時間を費やすことも珍しくありません。さらに、診察後に処方箋を持って調剤薬局へ移動し、そこでも再び薬が出来上がるのを待つことになります。移動時間を含めれば、一連のプロセスに3時間以上を要することも多々あります。もし、あなたの時給が1500円だとしたら、3時間の拘束は4500円分の機会損失を意味します。診察代と薬代が合わせて2000円だったとしても、時間コストを含めた総額は6500円に跳ね上がります。一方、ドラッグストアでの市販薬購入は、仕事帰りや買い物のついでに数分で完了します。薬剤師や登録販売者に相談しても、待ち時間はほとんどありません。薬代が2500円だったとしても、時間コストがほぼゼロであれば、トータルの損失は2500円のみで済みます。この比較から明らかなように、軽度の不調であれば、市販薬を選択する方が「トータルで安上がり」になるケースが非常に多いのです。特に、深夜や早朝に体調が悪くなった場合、救急外来を受診すれば深夜加算や時間外加算が適用され、診察代だけで数千円が加算されます。これに比べれば、24時間営業の店舗や常備薬で対応することの経済的メリットは計り知れません。また、市販薬には「すぐに服用できる」という即時性の利点もあります。症状が悪化する前に初期段階で市販薬を服用し、1日で体調を戻すことができれば、翌日からの仕事のパフォーマンスを維持できます。逆に、病院へ行くのを後回しにして症状をこじらせ、結果として数日間仕事を休むことになれば、数万円単位の減収に繋がる恐れがあります。このように、経済性の判断には、単なるキャッシュアウトの比較だけでなく、機会損失の回避という視点が不可欠です。もちろん、重症化のリスクがある場合や、原因が不明な痛みなどは、時間を惜しまず病院へ行くことが長期的には安くつきますが、日常的な軽いトラブルにおいては、市販薬の持つ「スピード」と「利便性」こそが、最大のコスト削減要因となることを忘れてはなりません。
時間コストと利便性を加味した市販薬の隠れた経済性