溶連菌は、喉から感染して全身に毒素をばらまくだけでなく、皮膚のバリア機能が低下した場所に直接感染し、皮膚の病気を引き起こすこともあります。その代表が「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」、通称「とびひ」です。とびひは、主に夏場、あせもや虫刺され、湿疹などを掻き壊した傷口から細菌が入り込むことで発症します。原因菌は主に「黄色ブドウ球菌」と「溶連菌」の二種類ですが、どちらが原因かによって、症状の見た目に少し違いがあります。黄色ブドウ球菌による「水疱性膿痂疹」は、皮膚に水ぶくれ(水疱)ができ、それが破れると皮膚がめくれて、ただれたようになるのが特徴です。一方、溶連菌が原因となる「痂皮性膿痂疹(かひせいのうかしん)」は、最初にできた赤い発疹や水ぶくれが、すぐに厚いハチミツ色のかさぶた(痂皮)で覆われるのが特徴です。炎症が強く、周囲の皮膚が赤く腫れたり、発熱やリンパ節の腫れといった全身症状を伴ったりすることもあります。とびひの最も厄介な点は、その名の通り、まるで火事の飛び火のように、あっという間に体のあちこちに広がってしまうことです。患部には強いかゆみがあり、子どもが掻きむしった手で体の別の場所を触ることで、そこに含まれる細菌が次々と新しい病変を作ってしまいます。治療の中心となる診療科は「皮膚科」または「小児科」です。治療の基本は、原因となっている細菌を退治するための「抗生物質」です。溶連菌が原因の場合は、ペニシリン系の抗生物質の内服が第一選択となります。同時に、患部には抗生物質入りの軟膏を塗布します。家庭でのケアも非常に重要です。患部を清潔に保つために、石鹸をよく泡立てて優しく洗い、シャワーで洗い流します。かき壊しを防ぐために、爪は短く切り、患部をガーゼなどで保護することも有効です。また、とびひは他の人にうつるため、治癒するまではプールに入ることはできません。タオルや衣類の共有も避けるべきです。たかがとびひと侮らず、専門医のもとでしっかりと治療することが、早期治癒と合併症予防に繋がります。