全身に赤い発疹が出る病気は数多くあり、溶連菌感染症による猩紅熱もその一つです。しかし、中には命に関わる危険な病気や、対応が全く異なる病気も含まれているため、自己判断は非常に危険です。正確な診断のためには、医師の診察が不可欠ですが、保護者として知っておくべき、溶連菌と間違いやすい発疹症との鑑別のポイントをいくつか紹介します。まず、乳幼児に多い「突発性発疹」です。これはヒトヘルペスウイルス6型または7型による感染症で、3~4日間続く高熱が特徴です。そして、熱が下がると同時に、お腹や背中を中心に赤い発疹が現れます。熱と発疹が入れ替わるように出るのが、猩紅熱との大きな違いです。次に、「麻疹(はしか)」は、非常に感染力が強く、高熱、咳、鼻水、目の充血といった風邪のような症状(カタル期)が数日続いた後、口の中にコプリック斑という白い斑点が現れ、その後、耳の後ろあたりから全身に癒合傾向のある(発疹同士がくっついて広がる)赤い発疹が出ます。猩紅熱の点状の発疹とは見た目が異なります。また、「風疹」も三日はしかと呼ばれ、発熱と共に全身に淡い発疹が出ますが、耳の後ろのリンパ節が腫れるのが特徴です。そして、最も注意深く鑑別しなければならない病気の一つが「川崎病」です。これは乳幼児に多い原因不明の血管炎で、5日以上続く高熱、両眼の充血、唇や舌の発赤(いちご舌)、首のリンパ節の腫れ、そして手足の腫れと不定形の発疹が主要な症状です。いちご舌や発疹は猩紅熱と似ていますが、川崎病は心臓の血管にこぶ(冠動脈瘤)という重篤な合併症を残す可能性があり、早期に診断し、免疫グロブリン大量療法といった特殊な治療を開始する必要があります。その他、薬のアレルギーで起こる「薬疹」も、全身に様々なタイプの発疹を引き起こします。これらの病気を見分けるためには、発疹の見た目だけでなく、発熱のパターン、他の随伴症状、舌や目の状態、リンパ節の腫れなどを総合的に判断する必要があります。安易に「溶連菌だろう」と決めつけず、必ず小児科や内科、皮膚科を受診してください。
溶連菌と間違いやすい皮膚の発疹、鑑別のポイント