「のどちんこに口内炎ができた」と表現されることが多いですが、医学的には、私たちが普段「口内炎」と呼んでいるものと、「口蓋垂炎」は異なる病態です。症状や原因を正しく理解するために、その違いや、他に喉の奥に痛みを引き起こす病気との見分け方を知っておくことは有用です。まず、最も一般的な口内炎である「アフタ性口内炎」は、ストレスや疲労、ビタミン不足などが引き金となり、頬の内側や唇の裏、舌、歯茎といった場所に、境界がはっきりした白く丸い潰瘍ができるのが特徴です。通常、口蓋垂そのものにアフタ性口内炎ができることは稀です。痛みの性質も、口蓋垂炎が喉全体の異物感や飲み込む時の痛みであるのに対し、アフタ性口内炎は、潰瘍の部分に食べ物などが触れた時にしみるような、局所的な痛みが主となります。次に、夏場に子どもを中心に流行するのが、エンテロウイルス属のウイルスが原因となる「ヘルパンギーナ」です。これは、発熱と共に、口蓋垂の周辺や、喉の奥の粘膜(軟口蓋)に、複数の小さな水ぶくれ(水疱)や、それが破れた後の潰瘍ができるのが特徴です。口蓋垂炎のように全体が赤く腫れるというよりは、はっきりとした水疱や潰瘍が点在して見えるのが鑑別のポイントです。同じく夏風邪の一種である「手足口病」も、口の中に水疱や潰瘍ができますが、その名の通り、手のひらや足の裏、お尻などにも特徴的な発疹が現れるため、比較的区別がつきやすいです。また、喉の痛みの代表的な原因である「急性扁桃炎」は、口蓋垂の両脇にある扁桃腺が、赤く大きく腫れあがり、しばしば白い膿(白苔)が付着します。口蓋垂炎が単独で起こることもあれば、この扁桃炎に合併して口蓋垂も腫れることもあります。さらに、カビの一種であるカンジダ菌が口の中で異常増殖する「口腔カンジダ症」では、口蓋垂を含む口腔内の広範囲に、拭うと剥がれる白い苔のようなものが付着します。痛みはあまり強くないことが多いですが、免疫力が低下している人に見られます。これらの病気は、発生する場所や見た目、随伴症状にそれぞれ特徴がありますが、正確な診断は専門医でなければ困難です。自己判断せず、耳鼻咽喉科で診てもらうことが大切です。
口内炎との違いは?喉の奥の痛みの原因を見分ける