溶連菌とは?喉の感染症がなぜ皮膚に症状を引き起こすのか
溶連菌感染症は、正式には「A群β溶血性連鎖球菌」という細菌によって引き起こされる感染症で、主に子どもの間で流行します。多くの人が「溶連菌」と聞くと、高熱や喉の強い痛み、扁桃腺の腫れといった「急性咽頭炎・扁桃炎」を思い浮かべるでしょう。実際に、これが最も一般的な病型です。しかし、溶連菌の厄介な点は、その影響が喉だけにとどまらないことにあります。感染した菌株の種類によっては、菌が産生する特殊な「毒素」が血液中に入り、全身を巡ることで、皮膚に多彩な症状を引き起こすのです。これが、「溶連菌なのに、なぜか全身に発疹が出る」という現象の正体です。この毒素は「発赤毒素(ほっせきどくそ)」または「外毒素」と呼ばれ、毛細血管を拡張させる作用があるため、皮膚が赤く見えるようになります。代表的な皮膚症状が、後述する「猩紅熱(しょうこうねつ)」です。また、溶連菌は喉だけでなく、皮膚の小さな傷口などから直接感染し、皮膚そのものに炎症を起こすこともあります。これが「伝染性膿痂疹(とびひ)」や、非常に稀ですが命に関わる「壊死性筋膜炎(人食いバクテリア)」といった、より重篤な皮膚感染症の原因となります。このように、溶連菌と皮膚には密接な関係があり、皮膚症状は溶連菌感染症の重要な診断の手がかりとなります。受診すべき診療科は、基本的には喉の症状が主体であれば、子どもは「小児科」、大人は「内科」です。しかし、とびひのように皮膚症状がメインの場合は「皮膚科」が中心となって治療にあたることもあります。どの科を受診するにせよ、溶連菌感染症は合併症を防ぐためにも、抗生物質による適切な治療が不可欠な病気です。