これまで見てきたように、「爪」という小さなパーツのトラブルには、非常に多くの原因が潜んでおり、それに応じて関わる診療科も多岐にわたります。適切な治療への第一歩として、自分の症状に合った診療科をいかに選ぶかが重要になります。ここでは、最適な診療科を見つけるための思考プロセスを整理してみましょう。まず、Step 1として、爪のトラブルの原因を考えます。「ドアに挟んだ」「重いものを落とした」といった明らかな「外傷(けが)」が原因であれば、迷わず「整形外科」を受診しましょう。骨折の可能性も考慮する必要があります。次に、Step 2として、爪そのものの「見た目の変化」に注目します。「爪が白く濁り、厚くなってボロボロ崩れる」のであれば、最も可能性が高いのは爪水虫(爪白癬)であり、カビの専門家である「皮膚科」が第一選択です。「爪の周りが赤く腫れてズキズキ痛む」なら、爪囲炎を疑い、まずは「皮膚科」、膿が溜まって痛みが強い場合は「整形外科」も視野に入れます。「爪が皮膚に食い込んで痛い」巻き爪や陥入爪も、「皮膚科」や「整形外科」、「フットケア外来」が担当します。そして、Step 3は、最も注意が必要な「爪の色」の変化です。「爪に黒い縦線やシミができた」場合は、悪性黒色腫(メラノーマ)の可能性を否定するために、絶対に放置せず、直ちに「皮膚科」を受診してください。ダーモスコピーでの専門的な診断が不可欠です。最後に、**Step inudiv> Step 4として、「爪以外の全身症状」の有無を確認します。「スプーンのように反り返った爪」と倦怠感があれば、貧血を疑い「内科」へ。「指先が太鼓のばちのように丸くなる」ばち指があれば、心肺疾患を考え「呼吸器内科」や「循環器内科」へ。「原因不明の発熱や関節痛、皮膚の発疹」と共に爪の変化がある場合は、膠原病を疑い「リウマチ・膠原病内科」へ相談します。もし、これらのステップを踏んでも判断に迷う場合は、爪は皮膚の一部であるという基本に立ち返り、まずは「皮膚科」を最初の窓口として受診するのが最も合理的です。皮膚科医が、全身疾患のサインだと判断すれば、適切な専門科へ紹介してくれます。爪からの小さなサインを見逃さず、この思考プロセスを参考に、早期に正しい診断と治療に繋げてください。