慢性的な頭痛に長年悩まされている方の中には、脳神経外科や内科を受診しても、あるいは市販薬を飲んでも、なかなか症状が改善しないという方もいるかもしれません。そのような場合に、非常に頼りになるのが「頭痛外来」です。頭痛外来は、その名の通り「頭痛」の診断と治療を専門的に行う外来で、主に脳神経外科や脳神経内科、あるいはペインクリニックなどに設置されています。では、通常の診療科と頭痛外来では何が違うのでしょうか。最大のメリットは、担当する医師が「頭痛専門医」であることが多い点です。頭痛専門医は、日本頭痛学会が認定する専門医制度で、頭痛に関する深い知識と豊富な臨床経験を持つ医師に与えられます。彼らは、国際頭痛分類という詳細な診断基準に基づいて、患者さんの頭痛がどのタイプなのかを正確に鑑別するトレーニングを積んでいます。詳細な問診に多くの時間をかけ、患者さん一人ひとりのライフスタイルや頭痛の誘因までを考慮に入れた、きめ細やかな診療が期待できます。また、頭痛外来では、最新の治療法を積極的に導入していることが多いのも特徴です。例えば、片頭痛の治療では、従来のトリプタン製剤に加え、近年登場したCGRP関連抗体薬という、発作を予防する効果が非常に高い注射薬や、ジタン系、ゲパント系といった新しいタイプの治療薬も選択肢となります。これらの新しい薬は、副作用や使用上の注意点があるため、その処方には専門的な知識と経験が不可欠です。頭痛専門医は、これらの多様な治療オプションの中から、患者さんの症状や体質、希望に最も合ったものを提案してくれます。さらに、頭痛外来では、「頭痛ダイアリー」の活用を推奨することが多いです。これは、いつ、どのような痛みがあったか、薬をいつ飲んだか、誘因となった可能性のある出来事などを記録する日記です。これを付けることで、患者さん自身が自分の頭痛のパターンを客観的に把握できるだけでなく、医師にとっても診断や治療効果の判定に非常に役立つ情報となります。薬物療法だけでなく、生活習慣の指導やストレス管理といった非薬物療法にも力を入れている点も、頭痛外来の大きなメリットと言えるでしょう。長引く頭痛で生活の質が低下していると感じるなら、一度、頭痛外来の扉を叩いてみる価値は十分にあります。