頭痛で専門的な医療機関を受診しようと考えた時、「脳神経外科」と「脳神経内科」、この二つの診療科の名前が挙がります。どちらも「脳神経」とついているため、その違いがよくわからず、どちらを選べばよいか迷う方も多いでしょう。この二つの科は、対象とする疾患領域に多くの共通点を持ちながら、その治療アプローチに大きな違いがあります。まず、どちらの科も、脳、脊髄、末梢神経、筋肉の病気を専門的に扱います。頭痛の原因となる、くも膜下出血、脳梗塞、脳出血、脳腫瘍、髄膜炎といった病気は、両方の科で診断・治療の対象となります。また、慢性的な頭痛である片頭痛や緊張型頭痛の診断と薬物治療も、両科で行われます。したがって、「頭痛」という症状で受診する場合、どちらの科を選んでも、初期の診断(問診、診察、CT・MRIなどの画像検査)においては、ほぼ同じレベルの対応が期待できます。では、違いはどこにあるのでしょうか。最も大きな違いは、治療の手段です。簡単に言うと、「脳神経外科」は、手術的なアプローチを主とする科です。くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤のクリッピング手術やコイル塞栓術、脳腫瘍の摘出手術、脳出血における血腫除去術など、外科的な処置が必要な疾患の治療を専門とします。一方、「脳神経内科」は、主に薬物療法やリハビリテーションなど、内科的なアプローチで治療を行う科です。脳梗塞に対する血栓溶解療法や抗血小板薬・抗凝固薬による治療、てんかんやパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経難病の管理、そして片頭痛などの慢性頭痛に対する予防薬や治療薬の調整などを専門とします。つまり、頭痛の原因を調べる「入り口」としてはどちらも適していますが、その原因が手術を必要とするものであれば脳神経外科、薬物治療が中心となるものであれば脳神経内科が、その後の「出口(治療)」の専門家となるわけです。実際には、多くの病院で両科は緊密に連携しており、診断の結果に応じて最適な科で治療が継続されるため、患者さん自身が最初の段階で厳密に区別する必要はあまりありません。