爪のトラブルの中で、最も頻度が高いものの一つが「爪水虫」、医学的には「爪白癬(つめはくせん)」と呼ばれる病気です。これは、水虫の原因菌である「白癬菌(はくせんきん)」というカビの一種が、足の皮膚から爪の中に侵入し、そこで増殖することで発症します。爪水虫を疑った場合に受診すべき診療科は、カビの専門家である「皮膚科」です。爪水虫は、放置しても自然に治ることは決してありません。それどころか、爪の中で増殖した白癬菌が、常に皮膚へ菌を供給し続けるため、足の水虫が治りにくくなったり、再発を繰り返したりする原因となります。また、治療しない限り、病変は他の指の爪へ、あるいは手や体の他の部分へと広がっていく可能性があります。さらに、家族など同居している人にうつしてしまう感染源にもなり得ます。爪水虫の典型的な症状は、爪が白く濁ったり、黄色っぽく変色したりすることから始まります。進行すると、爪が厚く、もろくなり、ボロボロと崩れるようになってきます。爪の下に角質がたまって、爪が浮き上がったように見えることもあります。痛みやかゆみといった自覚症状はほとんどないため、見た目の変化に気づいても、「年のせいだろう」と放置してしまう人が多いのが実情です。皮膚科では、まず本当に白癬菌がいるのかを確定診断するために、検査を行います。疑わしい部分の爪を少し削り取り、それを顕微鏡で観察して、白癬菌の菌糸を探します。この検査で菌が確認されて初めて、爪水虫の治療が開始されます。治療の基本は、抗真菌薬(カビを殺す薬)による薬物療法です。以前は内服薬(飲み薬)が治療の主体でしたが、肝臓への負担などの副作用が懸念されることもありました。しかし現在では、爪への浸透性が非常に高い、効果的な外用薬(塗り薬)が次々と登場しています。爪の生え替わる期間に合わせて、半年から1年、あるいはそれ以上、根気よく治療を続けることで、きれいな爪を取り戻すことが可能です。自己判断で市販の水虫薬を塗っても、硬い爪には薬効成分が浸透しないため、効果は期待できません。爪の濁りや変形に気づいたら、必ず皮膚科を受診してください。
最も多い爪の病気「爪水虫(爪白癬)」は皮膚科が専門