学校に行きたいという気持ちはあるのに、どうしても朝になると体が動かない。無理をして玄関まで行こうとすると腹痛や吐き気が襲ってくる。こうした症状を抱える子供たちやその保護者にとって、起立性調節障害という言葉は救いであると同時に、深い苦悩の始まりでもあります。身体的な症状がメインであっても、それが長期化して不登校に近い状態になっている場合、何科を受診すべきかの選択肢に心療内科が加わります。心療内科は、心理的な要因が身体症状に影響を与える、いわゆる心身症を専門に扱う科です。起立性調節障害は、体質的な自律神経の脆弱性に加え、環境の変化やプレッシャーといった心理的ストレスが引き金となって発症したり悪化したりすることが非常に多いため、心療内科のアプローチは極めて有効です。小児科での身体的な検査を一通り終えても症状が改善しない場合や、明らかに学校の話題が出ると体調が悪化するといった傾向が見られる場合、心療内科の門を叩くことは決して間違いではありません。心療内科での初診は、通常の病院よりも長い時間をかけて問診が行われることが一般的です。医師は、本人が今どのような不安を抱えているのか、家庭や学校での人間関係はどうなっているのか、そして何より本人がどうなりたいと考えているのかを丁寧に聞き取ります。ここでは、症状を抑えることだけを目的とするのではなく、症状が出ている背景を一緒に整理していく作業が行われます。心療内科の医師は、起立性調節障害が単なる心の病気ではなく、自律神経の乱れという身体現象であることを理解した上で、そこにどうストレスが関与しているかを分析してくれます。治療においては、漢方薬や自律神経調整剤を用いた薬物療法のほかに、カウンセリング的な関わりが重視されます。自分の体の状態を客観的に理解するための心理教育が行われたり、ストレスとの上手な付き合い方を学ぶためのアドバイスがなされたりします。また、心療内科の大きな役割の1つに、家族へのサポートがあります。朝起きられない子供をどう見守ればいいのか、どのように声をかければ本人の負担にならないのかといった、日々の対応に悩む親御さんに対しても、専門的な見地から助言をくれます。何科を受診するかで家族間の意見が割れることもあるかもしれませんが、本人の精神的な消耗が激しい場合は、心療内科という場を設けることで、家庭内が冷静さを取り戻すきっかけになることもあります。さらに、心療内科の医師は、学校との連携においても重要な役割を果たします。診断書を通じて、本人の状態が怠けではなく、休養や配慮が必要な医学的な状態であることを学校側に正確に伝えてくれます。午後からの登校や、保健室利用の許可、あるいはオンライン授業の活用など、本人が社会との繋がりを断たずに済むための具体的な環境調整を提案してくれるのです。不登校という大きな壁を前にしたとき、親も子も絶望的な気持ちになることがありますが、心療内科はそうした心の痛みに寄り添いながら、一歩ずつ回復への道を照らしてくれます。身体の不調を入り口にしながら、心全体の健康を取り戻していくプロセスは、その後の人生においても大きな糧となるはずです。
不登校と自律神経の不調を心療内科で診る